安土城跡
滋賀県近江八幡市安土町下豊浦
■信長が信奉した盆山と巨大な蛇石の謎
安土城跡という見出しを見て、おやっと思った
ひとが多いのではないだろうか。無理もない。神
罰が当たりこそすれ、およそ宗教心などないよう
な信長と岩石信仰との接点はどこにあるのか、と
疑問をもたれたのではないだろうか。
その疑問を解く鍵が、ルイス・フロイスの『日
本史』と、太田牛一の『信長公記』に遺されて
いる。まず、フロイスの『日本史』より大意を紹
介する。
神々の社には、通常神体と称する石がある。そ
れは神像の心と実体を意味するが、安土にはそれ
がなく、信長は、予自らが神体であるといってい
た。ある人物がそれにふさわしい盆山と称する一
個の石を持参した際、かれは寺院の一番高所、す
べての仏の上に窓のない仏龕をつくり、その石を
収納するように命じた。
(『磐座百選』より一部抜粋)
日吉大社
滋賀県大津市坂本5丁目1番1号
■日吉大社の始原、金大巌
延暦寺がある比叡山の琵琶湖側に、山塊が突
き出るように秀麗な支峰が存在する。八王子山と
も牛尾山ともよばれているが、『古事記』には
日枝山として登場する。背後の比叡連峰を大比叡、
八王子山を小比叡とよんで区別している。
標高378メートル、神奈備型の山容と美しい
林相を見せる神体山だ。
八王子山の山頂近くに「 金大巌(こがねのおおいわ)」
とよばれる磐座が存在する。全国3800の日吉神社の
総本社である日吉大社は、この巨石信仰から始まる。
『古事記』に、「大山咋神、亦の名は山末之 の 大主神。
この神は、近つ淡海国の日枝山に坐す」と記され
た土着神だ。
(『磐座百選』より一部抜粋)
石山寺
滋賀県大津市石山寺1-1-1
■本堂内の岩盤上に坐す本尊
山号・寺号ともに石を冠した寺がある。石光山
石山寺だ。山号は、かつて寺院が山中に建てられ
ることが多く、その山の名前をとって山号とした
ことが原形とされる。が、石山寺の背後にある山
は「伽藍山」とよばれている。とすると、「伽藍
山石山寺」と称すべきところだが、石光山とある
のはなぜか。
その疑問は境内に足を踏み入れると氷解する。
各所に露出する硅灰石の存在だ。「石灰岩が地中
から突出した花崗岩と接触し、その熱作用のため
変質したもの」とあり、「石山」の起こりとなっ
たと記されている。
(『磐座百選』から一部抜粋)